今朝旦那を見送った後、1階でパソコンを見ていたら、
どうも、2階ベランダあたりで物音がする。
何事かと思って外のほうへ目をやると、
家のすぐ横にある欅の木が、わさわさと大きく揺れていて
上からでっかい枝がドサッと落ちてきた。
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北海道・旭川のアパートに住んでいた頃、
アパートの横には立派な白樺の木が一本立っていた。
夏には葉っぱが青々と茂って、
晴れた午後には、
その木漏れ日が部屋の中まで届き、
すごく気持ちがよかった。
私はその中で、猫と一緒に昼寝をするのがとても好きだった。
ある朝起きると、アパートのすぐ近くでチェーンソーの音がしていて
気になって外を見ると
昨日まで元気だった白樺が無惨にも切り倒されており
昨日まであったはずの木漏れ日はどこにもなかった。
作業を終えたらしきおじさんに
「白樺、切っちゃったんですか!!?」と2階から声をかけると、
おじさんは
「日当りが悪くなってこんなもんだめだ」
というようなことを当たり前のように言った。
ショックだった。
今日まですっかり忘れていたあの事件。
わさわさ揺れる欅を見た瞬間、
一瞬にして記憶が蘇った。
慌てて外へ出ると、
見知らぬおじちゃんとおばちゃんがうちの欅を見上げていて
おじちゃんの手にはながーい柄の鋸。
私に気づいたおばちゃんが
「もしかして、この家の方かね?」と話しかけてきた。
話を聞けば、
おじちゃんとおばちゃんは、うちの大家さん(80何歳のおばぁちゃん)に頼まれて
欅の枝を落としに来ていた。
木と家があまりにも近いため、
放っておくと枝が成長しすぎて、
家の外壁(ちなみにトタン)をぶち破ってしまう可能性があるという。
だから、家側の枝は落とすしかないけれど
川側の枝はちゃんと残すからね、とおばちゃん。
よかった、全部切り倒されちゃうのかと思って慌てて出て来たよ、
という主旨の話をすると
「そうか、あんたは若いのに木が好きなんか。
おとうさーん、この方木が好きなんやって。
あんまり切ったらかわいい(飛騨弁で「かわいそう」)って言っとるで
できるだけ切らんといてあげて」と。
お陰で、西側はすっかり枝が無くなったけれど
東側には立派な枝がほぼ手つかずの状態で残っている。
来年の春にはまた、気持ちのいい木漏れ日を届けてくれる欅。
まだまだ、何十年も、何百年も、長生きしてくれますように。